「耐火構造」の基準

万が一の火災時に被害を抑えるよう、法律で建物の構造や用いるべき材料などが決められています。特に共同住宅や商業地域にある住宅などには、高いレベルの技術的基準が設定されています。

その主なものが、「耐火構造」、「準耐火構造」、「防火構造」の三つの構造。階数や延床面積、用途のほか、建設地が防火地域か準防火地域かで区分が決まります。

性能の高い順に、「耐火構造」、「準耐火構造」、「防火構造」となります。また、建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造として、住宅金融支援機構が定める基準に適合する 「省令準耐火構造」があります。

「耐火構造」の基準

●「耐火構造」とは?

「耐火構造」とは、壁や床などが一定の耐火性能(通常の火災が終了するまでの間、建築物の倒壊、および延焼を防止するために必要な性能)を備えた構造のこと。階数や構造部分の種類で異なりますが、最長3時間の火災に耐える高い性能が求められます。主要構造となる壁・柱・床・梁(はり)・屋根・階段は、仕様が定められており、国土交通大臣の認定を受けたものでなければなりません。不燃材料を使用した、鉄筋コンクリート造(RC造)、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)、鉄骨造(S造)の両面を耐火被覆した構造、コンクリートブロック造などが主な構造方法となります。なお、近年の技術の進歩により、木造(W造)でも「耐火構造」への適合が可能になりました。「耐火構造」で建てられ、火災の拡大を防ぎ、避難の安全を確保する防火区画や、外壁の延焼の恐れのある開口部に、防火設備などが設置されたものを、耐火建築物と呼びます。

●「準耐火構造」との違い

「準耐火構造」の方が、少し緩やかな基準となっており、「通常の火災による延焼を抑制するために必要な構造」とされています。階数が低く、延床面積が小さめの建物の場合に該当する基準となっていて、構造部分により異なりますが、最長1時間、火災で部材の強度が弱まり建物が崩壊し、あるいはほかに火災が広がらないことが求められます。「耐火構造」と同じように、主要構造となる壁・柱・床・梁・屋根・階段は、仕様が定められ、国土交通大臣の認定を受けたものでなければなりません。ちなみに、間仕切り壁、外壁、柱、床、梁は45分間、軒裏を除く屋根や階段は30分間という、火災に耐える技術的基準が定められています。不燃材料である、瓦・陶磁器質タイル・金属板・モルタル・ロックウール・石膏ボードなどを使った構造とする点も同様です。なお、「準耐火構造」で建てられ、火災の拡大を防ぎ、避難の安全を確保する防火区画や、外壁の延焼の恐れのある開口部に、防火設備などが設置されたものを、準耐火建築物と呼びます。準耐火建築物は、準耐火建築物(イ1=木造:60分)、準耐火建築物(イ2=木造:45分)、準耐火建築物(ロ1=非木造:外壁耐火、屋根不燃)、準耐火建築物(ロ2=非木造:軸組不燃、屋根不燃)の4つに分類されます。 

●「防火構造」との違い

建設地が防火地域・準防火地域の場合、かなりの割合で「耐火構造」、「準耐火構造」のどちらかで建てなければなりません。その対象外である比較的小規模な住宅でも、防火地域・準防火地域で建てる場合に求められるのが「防火構造」です。周囲で発生した火災の延焼に巻き込まれないため、外壁と軒裏に防火性のある材料を使用し、30分間の加熱でも支障のある変形や破壊を生じることがなく、またその裏面が出火に至る危険温度とならないことが要件となっています。木造(W造)住宅の「防火構造」としては、外壁の屋外側を鉄網モルタル塗りとし、屋内側を石膏ボード張りとする方法などがあります。

建築物を防火構造としなければならないのは次のようなケースがあります。

1.防火地域の一定の付属建築物

防火地域で、平屋建ての付属建築物(延べ面積が50平方メートル以下のものに限る)を建てる場合は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。しかしこの場合には、当該建築物は防火構造とする必要がある(建築基準法61条)。

2.準防火地域の地上1階または地上2階の建築物

準防火地域では、地上1階または地上2階の建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。しかし、そうした場合でも、その地上1階または地上2階の建築物が木造等である場合には、外壁・軒裏を防火構造としなければならない(建築基準法62条2項)。

3.準防火地域の3階建て建築物

準防火地域では、3階建ての建築物(延べ面積が500平方メートル以下のものに限る)は、耐火建築物や準耐火建築物にしないことが可能である。しかし、そうした場合には「3階建て建築物の技術的基準」に適合する必要があるとされている(建築基準法施行令136条の2)。この「3階建て建築物の技術的基準」では、3階建て建築物の外壁と軒裏は必ず防火構造としなければならないとされている。

●省令準耐火構造の住宅とは

建築基準法で定める準耐火構造に準ずる防火性能を持つ構造として、住宅金融支援機構が定める基準に適合する住宅をいいます。具体的には次の1~3のいずれかの住宅または工法です。省令準耐火構造の住宅の特徴は、「外部からの延焼防止」①外壁及び軒裏→防火構造(30分耐火) ②屋根→不燃材料、「各室防火」③天井・壁にせっこうボードなどを使用し、防火皮膜も施して、 指定の性能(15分耐火) ④「他室への延焼遅延」④ファイヤーストップ材を用いるなどが挙げられます。

1. 機構の定める省令準耐火構造の仕様に基づき建設された木造軸組工法の住宅又は枠組壁工法(2×4)住宅

2. 省令準耐火構造として機構が承認したプレハブ住宅

3. 省令準耐火構造として機構が承認した住宅または工法

「準耐火構造」は建築基準法に準ずる基準として定められていますが、「省令準耐火構造」は建築基準法で定められた法令ではありません。住宅金融支援機構が定めた上記の3つのうちどれかに適合していることが基準となります。 

「防火地域」「準防火地域」の建築基準・制限

防火地域・準防火地域の建築制限は、「地域」「建築物の延べ面積」「階数」に応じて決められています。

最も制限の厳しい「耐火建築物」には、「耐火構造」を適用する必要があります。

次に厳しい「準耐火建築物」には、「準耐火構造」の適用が求められます。

続いて「一定の防火措置」「防火構造」と基準が緩和されます。

下の図の通り、建築基準法の制限によって防火構造が要求される部分に準耐火構造や耐火構造の仕様を使うのはOKということです。 

防火構造の大臣認定を採用する場合は、建材メーカーが取得している工法どおりに設計・施工する必要があります。

各工法ごとに大臣認定書が発行されており、大臣認定番号が割り振られています。

 認定番号の読み方は下記のとおり。

「耐火構造」のメリット・デメリット

●メリット

防火地域のほぼすべての建物と、準防火地域の2階建て以下(延床面積の規制あり)の小規模な建物以外のすべては、「耐火構造」か「準耐火構造」としなければなりません。

これは都市計画の観点からの法的な規制で、その地域に住む人の生命と財産を守るためのものです。火災に強く、燃え広がりにくい街で暮らせること自体が大きなメリットといえます。 

また、火災保険は災害時の損害を想定して保険料が決められるため、 「耐火構造」や「準耐火構造」の建物は、支払額を抑えることができます。保険会社や保険商品により異なりますが、「マンション構造」や「耐火構造」の方が、「非耐火構造」よりも保険料が低く設定されています(T構造には「耐火構造」と「準耐火構造」が含まれる)。

なお、住宅ローンの借入れで、住宅金融支援機構(フラット35)を利用する場合は、「耐火構造」、「準耐火構造(省令準耐火構造も含む)」、「耐久性に関する基準」のいずれかに適合する必要があります。 


●デメリット

主要構造が「耐火構造」、「準耐火構造」からなる耐火建築物・準耐火建築物は、建築費用が割高になる傾向にあります。不燃材料など部材にかかる費用だけでなく、防火窓や防火ドアなどの設備のための費用がかかることが要因です。

木造(W造)住宅の「耐火構造」は、専門知識が必要で工程も複雑なため、事業者の施工事例を確認するなど慎重を期す方が良いでしょう。木造(W造)、鉄骨造(S造)、鉄筋コンクリート造(RC造)など、いずれの場合も建物自体の重さが増すため、地盤や基礎の補強で費用が増える可能性もあります。

また、耐火建築物・準耐火建築物とするためには、防火窓や防火ドア、防火シャッターなどのほか、外壁や屋根、軒裏などにも不燃材を使用するため、外観のデザインにも影響がないとは言えません。使用できる窓のサイズやドアの形状、外壁の仕上がりなどが限定されてしまう可能性があります。完成した建物についてリフォームをする場合にも、注意が必要です。

定められた基準を保持しなければならないため、勝手に異なる仕様や構造に変えることができません。